書籍詳細:新さかなの経済学

新さかなの経済学 漁業のアポリア

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  • 紙の書籍
予価:税込 2,750円(本体価格 2,500円)
発刊年月
2024.05
ISBN
978-4-535-55978-3
判型
四六判
ページ数
376ページ
Cコード
C3033
ジャンル

内容紹介

日本の漁業の生産量・生産額はこの30年減り続けている。魚の消費量もこの20年右肩下がりだ。漁業の未来への活路はあるのか。

目次

序 章 漁獲量はなぜ減ったのか:マイワシバブル

第1章 規制改革:サバのIQ

はじめに
漁獲の8割がTAC下に
TAC魚種は流動的
サバへのIQ割当
IQ融通の実態
ITQ化で市場メカニズムを活用
過去実績:現実的な割当方法
過去実績の配分がもたらす諸問題
漁業者の不満は行動経済学が説明
棚ぼた問題:レントの行方
オークション:机上の空論
自己査定型資産税の適用
IQは後戻りが難しい


第2章 漁業権:桃浦牡蠣の陣

はじめに
三種類の漁業権
採貝藻は共同漁業権
大型定置は定置漁業権
養殖は区画漁業権
地元優先から経営手腕優先へ
優先順位の変更
企業アレルギーの素をたどると……
桃浦牡蠣の陣
戦に勝って勝負に負けた
新規参入の成功例:マグロとサーモン
養殖漁場は空いているのか
漁場は空いていない
戸倉のシンデレラ・ストーリー
漁業権の壁が守るもの
外資規制とトリプルスタンダード


第3章 所得向上に大義はあるか:漁業者という資源

はじめに
使命は国民への水産物の供給
漁業者主体という使命の終わり
漁業の民主化という使命の終わり
所得向上という政策目標
経済メカニズムに委ねる解決法
漁業者こそが保存すべき資源
輸出振興と国内供給の板挟み
6次産業化と人手不足
良い補助金・悪い補助金
多面的機能という免罪符
海に境界線を引く
海は誰のものか
カーテンの向こう側


第4章 外国人労働者:敵か味方か

はじめに
ルポ・漁業就業支援フェア
求人と求職のミスマッチ
外国人ならマッチング
海技士というハードル
技能実習生制度の問題と改正
特定技能へのキャリアパス
日本人と外国人を同質の労働者とみなすケース
日本人と外国人の技能に差があるケース
外国人船員が増えたら桶屋が儲かる?
労働生産性は停滞するか?


第5章 魚市場の謎:車海老の製品差別化

はじめに
小田原市場にて
せり・入札、相対取引
抜け目のない民設市場
築地も物流センターだった
オウンゴールの場外流通
情報公開と完全情報
車海老に見る価格差別化
価格差別化と消費者余剰
車海老に見る製品差別化


第6章 生物多様性:ご当地サーモンがやってきた

はじめに
シロサケ(秋鮭)の一生
イクラと白子で待遇に違い
ふ化事業に負のスパイラル
生物多様性への配慮
ネコマタギの復権
世界の主流は養殖生産
チリギンと宮城産銀ザケ
ご当地サーモンがブームに
サケにオランダ病?
成長産業化への課題


第7章 資源ナショナリズム:マグロは誰のものか

はじめに
何かと話題の太平洋クロマグロ
マグロは共有資源だが……
大間のマグロは一本釣り漁法
3つの市場の危うい均衡
近大まぐろへの期待と課題
近大の次は愛媛大か?
ツナ缶界のキングはビンナガ
FADsの功罪
小島嶼国の資源ナショナリズム


第8章 SDGs:太平洋島嶼国はカツオ街道

はじめに
太平洋島嶼での建国
島の陸地と海洋資源
200カイリ体制とカツオ資源
定額料金制のVDS
カツオで潤う国家財政
MIRAB経済
沿岸漁業は家事の1つ
SDGsに照らしてみれば
出稼ぎの功罪
島と海まで売りますか?


第9章 絶滅危惧種:うなぎの親子市場

はじめに
ニホンウナギの天然サイクル
ウナギの親子市場
ウナギ資源の減少要因
縮小する市場
絶滅危惧種ビジネス
陸揚げ後にウナギが国際移動
いつも食べているウナギの出自
良い密輸、悪い密輸
ウナギの採捕規制:シラスと天然ウナギ
「食べて増やそう」はいかがなものか
「増やして食べよう」はいかがだろうか


第10章 肉と魚:消費者の魚離れ

はじめに
需要側と供給側の要因
平成期に肉が魚を代替
30~50代が魚離れ
平成期を通じて価格は安定
米は補完財から代替財へ
所得の増減と水産物消費額の減少
高齢化と肉・魚消費
嗜好の変化と需要曲線
時短志向と魚料理の敬遠
家事時間の短縮
調理済み食品へのシフト
供給曲線のシフト
魚離れは下げ止まるのか


第11章 魚あら:ゴミを宝に

はじめに
非食用水産物の市場規模
魚あらと食品ロス
魚粉双六
魚粉ひっ迫で魚あらが代替
ふりだしに戻る
魚あら利用のドライバー
魚あらがお宝に変わるまで
製品の高度化・細分化と市場の縮小
鰹節屋の「練節」
魚あら処理の「経済性」
“やっ貝”なことは先送り


第12章 技術革新:スマート漁業への期待

はじめに
ルーブリックを用いたICT化の進行経路
漁船漁業はすでに技術集約型
情報の蓄積と流通で双方が利益を享受
夢が膨らむ流通改革
ロジスティクスの最適化
養殖業とICT
水産ICTの波及効果
ICTでアポリアが消える?
インターネット哲学