書籍詳細:賃金衡平法制論

賃金衡平法制論

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  • 紙の書籍
定価:税込 4,950円(本体価格 4,500円)
在庫なし
発刊年月
2011.06
ISBN
978-4-535-51718-9
判型
A5
ページ数
276ページ
Cコード
C3032
ジャンル

内容紹介

賃金格差を是正し、すべての人にディーセント・ワークと人間らしい生活を保障するために。カナダをはじめとする先進諸国とILOの動向をふまえ、賃金衡平法制のあるべき将来像を法社会学的に考察する。

目次

まえがき



序 章 賃金衡平法制の展開 1



第I部 ILOの男女同一価値労働同一報酬原則(賃金衡平原則)の生成と国際的展開



第1章 国際労働機関(ILO)の理念、組織および活動

1.1 国際労働機関(International Labour Organization(ILO))の設立

1.2 ILOの基本理念と目的

1.3 ILOの機構

1.4 ILOの国際労働基準



第2章 ILOのディーセント・ワーク政策

2.1 経済のグローバル化と貧富の格差の拡大

2.2 ディーセント・ワークの保障

2.3 インフォーマル経済の拡大と貧困の女性化

2.3.1 ILOとインフォーマル経済

2.3.2 インフォーマル経済における企業と労働者

2.3.3 インフォーマル経済におけるディーセント・ワークの欠如

2.3.4 問題を改善するためのILOの諸施策

2.3.5 インフォーマル経済で働く労働者の組織化

2.4 ディーセント・ワークの実現を目指す政労使の世界協定

2.4.1 危機の回復と発展を促進するための原則

2.4.2 ディーセント・ワークの4分野に対応する具体的な方策

2.4.3 公正で持続可能なグローバル化の形成



第3章 ILOの女性労働政策の展開

3.1 女性労働の沿革と性格

3.2 国連とILOの男女平等施策

3.3 男女労働者の「平等と保護」



第4章 ディーセント・ワークの核心にあるジェンダー平等

4.1 「ジェンダー平等」理念の登場とILOの活動

4.2 ディーセント・ワークと職業上のジェンダー平等

4.3 ディーセント・ワークの核心にあるジェンダー平等

4.3.1 2009年のILO総会における審議の結論

4.3.2 政府の役割

4.3.3 使用者団体の役割

4.3.4 労働者団体の役割

4.3.5 ILOの役割

4.3.6 実施に関するILO事務局の役割



第5章 男女同一価値労働同一報酬に関するILOの条約と勧告

5.1 第100号条約および第90号勧告(1951年)の成立に至る経緯

5.2 条約案および勧告案に関する総会委員会審議の主要論点

5.2.1 「同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬」の原則の解釈をめぐる審議

5.2.2 「職務内容を評価する客観的な基準の設定」に関する審議

5.3 第100号条約および第90号勧告の規定内容の要点

5.3.1 適用範囲

5.3.2 報酬

5.3.3 同一価値の労働

5.3.4 職務の価値の客観的な評価

5.3.5 ジェンダー中立(性偏見なし)の職務評価

5.3.6 条約の適用方法

5.3.7 条約の適用に関する政労使の役割

5.3.8 統計情報の重要性

5.3.9 賃金格差を是正するために必要な総合的アプローチ

5.4 男女賃金格差縮小に関するILOの政策提言

5.4.1 2003年グローバル・レポートの提言

5.4.2 2007年グローバル・レポートの提言

5.4.3 ジェンダー偏見が入り込まない分析的職務評価の手順



第6章 「男女同一価値労働同一報酬」の原則を実体化するための国際労働基準

6.1 「雇用および職業上の差別撤廃」第111号条約・第111号勧告(1958年)

6.1.1 条約および勧告の理念

6.1.2 規定内容の要点

6.1.3 条約および勧告の適用

6.2 「家族的責任を有する男女労働者の機会および待遇の均等」第156号条約・第165号勧告(1981年)

6.2.1 条約および勧告の理念

6.2.2 適用範囲および適用方法

6.2.3 定義

6.3 「パートタイム労働」第175号条約・第182号勧告(1994年)

6.3.1 成立の背景と経緯

6.3.2 基本視点

6.3.3 主要な規定内容

6.3.4 雇用・労働諸条件の保護

6.3.5 就業形態の自由選択権の保障

6.3.6 社会保障上の権利の保護

6.3.7 日本の課題

6.4 「在宅労働」第177号条約・第184号勧告(1996年)

6.4.1 成立の背景

6.4.2 規定内容の要点

6.4.3 総会委員会審議の結論と評価

6.5 「2000年母性保護」第183号条約・第191号勧告(2000年)

6.5.1 ILOの母性保護条約の沿革

6.5.2 2000年の改正に至った経緯

6.5.3 条約および勧告の規定内容の要点

6.5.4 新条約の批准に関わる問題(条約20条)

6.5.5 日本の母性保護施策の課題



第7章 加盟諸国における賃金衡平施策

7.1 男女賃金格差の概況

7.2 男女賃金格差の要因

7.3 「男女同一価値労働同一報酬」原則の法文上の明記

7.4 職務の比較と性偏見のない客観的な職務の価値評価

7.4.1 価値評価の方法

7.4.2 価値評価の実例

7.5 原則の実施効果を上げるためのILOの提言

7.5.1 統計情報の整備

7.5.2 救済制度の拡充

7.5.3 積極的な差別是正措置

7.5.4 最低賃金制度

7.5.5 政労使の協力

7.5.6 総合的施策の拡充



第II部 カナダにおける賃金衡平法制の展開と課題



第1章 カナダの男女平等賃金法制の概説

1.1 カナダ人の価値観

1.2 男女賃金格差の変遷

1.3 男女平等賃金の原則の展開

1.3.1 「男女同一労働同一賃金(equal pay for equal work)」の原則

1.3.2 「類似する、あるいは実質的に類似する労働に対しては、男女同一賃金(equal pay for similar or substantially similar work)」の原則

1.3.3 「男女同一価値労働同一賃金(賃金衡平)(equal pay for the work of equal value)」の原則

1.3.4 「プロアクティヴな賃金衡平(proactive pay equity)」の原則

1.3.5 法制以外の方法による賃金衡平へのアプローチ



第2章 男女平等賃金を保障する国際諸文書とカナダ政府の対応

2.1 国際諸文書に対する対応

2.1.1 国連「世界人権宣言」(1948年採択)

2.1.2 ILO第100号条約およびILO第111号条約

2.1.3 国連「国際人権規約(A規約およびB規約)」(1966年採択)

2.1.4 国連「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」(1979年採択)

2.1.5 国連第4回世界女性会議「北京宣言および行動綱領」(1995年採択)

2.1.6 ILO「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言とそのフォローアップ」(1998年採択)

2.2 カナダの国際的責務と国内のジェンダー平等政策



第3章 カナダ連邦の賃金衡平法制

3.1 カナダ連邦の人権保障法制

3.1.1 「英国領北アメリカ法(1867年憲法法)」(1867年)

3.1.2 「権利章典(The Canadian Bill of Rights)」(1960年)

3.1.3 「権利および自由に関するカナダ憲章(The Canadian Charter of Rights and Freedoms)」(1982年)

3.1.4 連邦「人権法(The Canadian Human Rights Act)」(1977年)

3.1.5 連邦「労働法典(The Canadian Labour Code)」(1970年)

3.1.6 連邦「雇用衡平法(The Employment Equity Act)」(1986年)

3.2 連邦の賃金衡平法制とその実施

3.2.1 連邦「人権法」11条が定める賃金衡平の原則

3.2.2 「平等賃金指針(The Equal Wages Guidelines)」(1978年策定、1986年改正)

3.2.3 法の実施と実施機関の処理事例

3.3 法実施の促進措置

3.3.1 標準的時間枠の設定

3.3.2 監査手続(audit process)

3.4 賃金衡平に関する連邦裁判所の重要判例

3.4.1 カナダ公務員労働組合連合(PSAC)事件

3.4.2 カナダ電話会社事件

3.4.3 北西準州政府事件

3.4.4 判例が示唆する連邦賃金衡平法制の問題点



第4章 オンタリオ州の賃金衡平法制

4.1 オンタリオ州の人権保障法制

4.1.1 「オンタリオ州人権法典(The Ontario Human Rights Code)」

4.1.2 「オンタリオ州雇用基準法(The Ontario Employment Standards Act)」

4.1.3 「オンタリオ州雇用衡平法(The Ontario Employment Equity Act)」

4.2 オンタリオ州賃金衡平法

4.2.1 成立の背景

4.2.2 規定内容の概要

4.3 オンタリオ州人権審判所および裁判所の判例

4.3.1 「法の目的と使用者の定義」に関する事案――オンタリオ州看護師協会事件

4.3.2 「職務クラス」に関する事案――ウェントワース郡教育委員会事件

4.3.3 「比較対象となりうる男性職務クラスの不存在」に関する事案――カナダ公務員労働組合・バリー市立図書館事件

4.3.4 「ジェンダー偏見のない職務比較システム」に関する事案――オンタリオ州看護師協会事件

4.3.5 「賃金衡平の維持」に関する事案――グレンギャリー記念病院事件

4.3.6 「代理機関を利用する職務比較方法規定廃止の違憲性」に関する事案――全国サービス労働者組合事件

4.4 法実施に関する評価

4.4.1 オンタリオ州労働省の1996年報告書

4.4.2 「賃金衡平法」のインパクト



第5章 ケベック州の賃金衡平法制

5.1 ケベック州人権と自由に関する憲章

5.2 ケベック州賃金衡平法(1996年11月21日制定、2006年・2009年改正)

5.2.1 規定内容の概要

5.2.2 法の実施効果

5.3 2009年改正法の主旨と要点



第6章 カナダの賃金衡平法制の総括

6.1 提訴モデルの課題

6.1.1 連邦法制の改正をめぐる動向

6.1.2 「PETF報告書」が勧告する新しい連邦賃金衡平法制の枠組み

6.1.3 連邦法制の改正をめぐる運動

6.2 プロアクティヴな賃金衡平法制の課題

6.2.1 プロアクティヴ・モデルのメリット

6.2.2 プロアクティヴ・モデルのデメリット

6.2.3 PETF報告書の評価と見解

6.3 ILOの総括的評価

6.3.1 スウェーデンおよびケベック州のモデル

6.3.2 英国およびオランダのモデル

6.3.3 フランスおよびスイスのモデル

6.3.4 ILOの評価



終 章 日本の国際的責務と課題

1 日本の男女賃金格差の現状

2 労基法4条とILO第100号条約

3 ILO条勧委の日本政府に対する改善要請

3.1 1992~1994年の条勧委の要請

3.2 2003年の条勧委の要請

3.3 2005年の条勧委の要請

3.4 2007年の条勧委の要請

4 2007年ILO基準適用総会委員会における日本事案の個別審査

4.1 日本の政労使代表の見解

4.2 他の加盟諸国代表の意見

4.3 基準適用総会委員会議長の集約見解

5 ILO条勧委の2008年年次報告書における対日要請

5.1 男女賃金格差

5.2 パートタイム労働

5.3 男女同一価値労働同一報酬

5.4 間接差別

5.5 コース別雇用管理制度

5.6 客観的職務評価

5.7 労働監督

6 他の国際組織からみた日本の女性労働政策

6.1 OECD対日経済審査報告書

6.2 世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」

6.3 国連の勧告

7 賃金衡平法制に関わる日本の国際的責務

7.1 日本の司法判断の現状と今後の課題

7.2 日本の賃金衡平法制に関する提言

7.3 日本の将来展望



あとがき

謝 辞



事項索引

ILOの条約・勧告

書評掲載案内

■2011年7月31日付『東京/中日新聞』

■『日本労働研究雑誌』2012年5月号書評欄