書籍詳細:「スイカ」の原理を創った男

「スイカ」の原理を創った男 特許をめぐる松下昭の闘いの軌跡

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  • 紙の書籍
定価:税込 2,530円(本体価格 2,300円)
在庫なし
発刊年月
2014.01(下旬刊)
ISBN
978-4-535-51985-5
判型
四六版
ページ数
280ページ
Cコード
C3030
ジャンル

内容紹介

今日、駅の出改札システムなどで普及している技術の考案者が強いられた特許をめぐる闘いの全容。驚くべき事実がいま明らかに。

目次

プロローグ 非接触ICカードを発明した松下昭



第1章 アメリカで高まった「松下特許」の評価

ロサンゼルスから深夜の電話/アメリカの特許弁護士と大学研究者が支援グループをつくる/アメリカで評価された「松下特許」



第2章 名古屋工業専門学校卒業からワイヤメモリ発明まで

名古屋工専を戦後まもなく卒業/二年のちに東工大に研究者として入る/電気機器絶縁層の処理に関する研究で学位を取得/大学から転身して本格的に開発に取り組む/パラメトロン開発の研究者らも協力/画期的なワイヤメモリの開発に成功/まず磁性体の薄膜化技術を確立する/コンピュータのメモリ素子に利用できることを思いつく/開発に立ちはだかる難問を次々と解決



第3章 世界のコンピュータ・メーカーに採用されたメモリックス

世界中から技術の粋が集まったニューヨークの展示会/全米を行脚してメモリックスの性能実験を検証/期待を一身に浴びたメモリックス



第4章 再び大学に戻り産学連携に取り組む

大学の研究室から生まれるアイデアを社会に移転/人類初の月面活動にも使われたメモレックス/複合磁気センサーを発明で顕彰される



第5章 製缶工場の技術指導から生まれた非接触伝送装置の発明

製缶工場の生産現場に横たわる課題の相談を受ける/ベルトコンベアから高速で塗布処理をする/世界で最初の非接触伝送装置のひらめき/製造現場を革新させる発明に熟成する/五六件の先行出願を精査する/製造現場を革新させる発明に熟成する



第6章 相次ぐ関連特許の出願と権利主張を始める

次々と出願した非接触伝送装置の関連特許/相次いで出願した非接触伝送の関連特許/「180特許」について/「672特許」について/「米国556特許」について/特許侵害を疑う製品が次々と市場に登場/松下の発明に抵触している可能性を示した見解書/日米で日本企業への「警告書」の発送を始める/オムロンのデータキャリアをめぐる警告書/自分でソニーに「警告書」を発送する



第7章 アメリカの特許事務所からライセンス交渉を始める

アメリカ流のライセンス交渉術/アメリカ流の警告書に驚く/ソニーと往復した20通の交渉書面/オムロンとの交渉も同時進行で進める/日立マクセルとの交渉は14回の往復書簡/新たに特許無効を主張してきた日立マクセル/空振りに終わったアメリカ流ライセンス交渉



第8章 豊田自動織機とのライセンス交渉

亡くなっていた竹馬の友/審査中の特許案件はどうなっているのか



第9章 十九年かかった特許の審査過程をを検証する

特許の審査は「二重受付」になっている/特許の出願件数を競った日本企業/出願から1年半経つと世界中に公開される/出願から特許となるまでの審査の流れ/「452特許」の基本的要件松下と特許庁審査官との折衝/長期にわたる分割出願・出願変更について/出願から査定までの全体の流れを表にする/審査官はどのような基準で審査するのか



第10章 進歩性をめぐる熾烈な攻防

第一の審査官はなぜ特許としなかったのか/特許にできない引例Bとはどんな技術なのか/最終的には拒絶査定となる/引例の組み合わせによる根拠とはなにか/引例Hとはどのような発明だったのか/遡及は認められないとして激しく争った引例/松下の執念で特許となる/審査のあり方に課題はないか/審査官に技術的な内容を理解させていたか/技術進歩に抜かれた技術を審査する矛盾/強い権利を避けたかった特許庁?/有村特許の請求項



第11章 特許二件を根拠に東京地裁に提訴

「452特許」と侵害の疑いの製品を精査/訂正審判でより強い特許にする/ついにソニーとJR東日本を提訴/スイカカードの動作原理/訴状に示された発明者の思い/ソニー側は松下の発明の基本構成に触れず/差止請求権を問題視する研究会の設置/無効審判を利用したベンチャー・中小企業つぶし/何回でも起こすことができる無効審判/松下が危惧した特許無効とする判決/キルビー特許事件とは/技術のわかる裁判官をつくらない日本



第12章 松下側とソニー側の主張点が出そろう

特許無効の訴えはしりぞける/スイカ・システムが特許に抵触するかどうかの争点の整理/「452特許」の争点2-1(構成要件J)/「452特許」の争点2-2(構成要件J、L)/「452特許」の争点3-1、3-2(構成要件L)「672特許」の争点4(構成要件N)/「672特許」の争点5(構成要件Q)/「672特許」の争点6(構成要件R1、R2)/「672特許」の争点7(構成要件R2の間欠的について)/「672特許」の争点8(構成要件Tの対向状態の検知について)



第13章 屈辱的な和解勧告と東京地裁の判断

東京地裁から勧告された和解/「452特許」の侵害の有無の判断/「672特許」の侵害の有無の判断



第14章 実証証拠を採用しなかった知財高裁

「争点2-2」(「受信電力変化量の信号」)の争い/「争点3」(電力変化量の信号に基づく送信出力の制御)の判断/「争点5」(蓄電機器を備えているかどうか)の判断/「争点6」(充電状態の判定)の判断/「争点7」(間欠的に送信動作を行う)の判断/「争点8」(充電の時間のタイミングを司る)の判断/争点を整理して絞ると三点になる/「受信電力変化量の信号」をめぐる争いについて/「制御」はされていたか/「コンデンサ」とはなにかをめぐる争い/松下が訴える知財高裁のまちがった解釈



第15章 弁論再開申立てに「無言」で通した知財高裁の対応

一審判決を覆す実験結果を出す/知財高裁の判決言い渡しも敗訴/「無言」で通した知財高裁の考えを推測すれば/ソニーの言い分をもう一度検証してみると



第16章 裁判で真相解明をしなければ「侵害し得」になる

日本版ディスカバリー制度の導入について/日本の裁判所は真実の発見をする場ではない/日本版

ディスカバリー制度を特許侵害訴訟に導入すべきだ/文系出身者には必要ないディスカバリー制度



第17章 外部からの技術を導入できない日本の企業文化

日本人の創意工夫は大企業に吸収されている/日本の大企業とのライセンス契約は実現できない/新しい技術を導入できない日本社会の体質/オープン・イノベーションが活性化しない日本の企業文化

書評掲載案内

■2014年4月27日付『読売新聞』29面