書籍詳細:紛争が戦争とならないために

紛争が戦争とならないために 国際法による制御の可能性

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  • 紙の書籍
予価:税込 7,480円(本体価格 6,800円)
発刊年月
2025.05(中旬)
ISBN
978-4-535-52852-9
判型
A5判
ページ数
368ページ
ジャンル

内容紹介

戦争の危機を伴う紛争を制御するため、国際法が果たす役割とは。「紛争から国際法を見る」という視点によって検討を深めていく。

目次

はしがき 西 平等 

序 章 国際法はいかにして紛争の制御に寄与するか
      ……西 平等 

1 「力の問題」と国際法 

2 キューバ危機における国際法の役割 

3 国際法の役割をとらえる広い視角 

4 紛争制御における国際法の役割という問い 

5 「国際インシデント」研究との異同 

6 本書の概要 

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第1部 国際法諸規範の意義
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第1章 自決原則に基づく分離要求への国際連盟理事会の対応
      ……西 平等 

1 はじめに 

2 連盟理事会への付託の経緯 

3 法律家委員会報告書 

4 調査委員会報告書  

5 解 決 

6 おわりに 


第2章 領域国際法の不確定性とコソボ紛争の余韻
      ……豊田哲也
 
1 はじめに 

2 人民自決原則と領土一体原則

3 領土一体原則の優越の動揺 

4 コソボ独立をめぐるICJ 勧告的意見手続き 

5 領域をめぐる争論(dispute)の意義 

6 おわりに 


第3章 トルコ・ギリシャ間のエーゲ海・東地中海諸紛争
      ……沖 祐太郎 

1 はじめに 

2 トルコ・ギリシャ関係の展開 

3 エーゲ海におけるトルコ・ギリシャ間の緊張とイミア島紛争 

4 東地中海における緊張と領土紛争への展開

5 おわりに 


第4章 北アイルランド和平とブレグジット……福永有夏

1 はじめに 

2 ベルファスト和平合意 

3 北アイルランド議定書とその後の展開 

4 おわりに 


第5章 冷戦期デタントの展開とその現代的意義
    ――勢力圏と安全保障をめぐる紛争への対処

      ……伊藤一頼 

1 はじめに

2 キューバ危機と緊張緩和 

3 米ソ・デタントの盛衰 

4 欧州に引き継がれたデタント 

5 おわりに 


第6章 ポーツマス条約(1905年日露講和条約)が
    戦前の極東における紛争の抑制・緩和に果たした役割

      ……小林友彦 

1 問題意識――ひとつの条約の機能と限界 

2 ポーツマス条約の内容 

3 帝政ロシア期における、極東での国際法秩序の基盤としての機能 

4 ロシア革命後における紛争抑制・緩和機能とその限界 

5 結論――ふりかえることの意義 

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第2部 軍事活動スキームへの移行の回避
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第7章 グレーゾーン事態対処の法的制御……鶴田 順 

1 海における「法の支配」 

2 「法の支配」における「法」
――現在の法か、それとも新たな法か 

3 各国海上法執行機関の「衝突」の回避のための方策
――「危機管理メカニズム」の設定 

4 尖閣諸島周辺海域における中国の活動 

5 日本の安全保障の課題――グレーゾーン事態への対処 

6 法執行活動スキームと軍事活動スキーム 

7 武力紛争法の適用 

8 グレーゾーン事態対処のための法整備の必要性 


第8章 海空域インシデントと武力紛争の間
――領域侵入事案に見る国際法の紛争制御機能
……黒﨑将広 

1 はじめに――「平和関係ノ安固ヲ期スル為」の仕組み 

2 海空域法秩序の特殊性 

3 海空域インシデントの範例
――当事国間の意思表示の枠組みとしての国際法 

4 おわりに――武力紛争回避の仕組みの発展に向けて

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第3部 国際裁判の役割
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第9章 国際紛争平和的処理手続による紛争制御の試み
―――コスタリカの例
……李 禎之

1 はじめに

2 領土紛争の経緯 

3 平和的解決の試み 

4 紛争制御を可能とした諸要因

5 おわりに


第10章 チャド・リビア領土紛争
――戦争が紛争になるために
……濵本正太郎 

1 はじめに 

2 植民地時代 

3 非植民地化過程 

4 武力紛争 

5 ICJ 付託合意 

6 ICJ 判決 

7 判決後 

8 なぜリビアはICJ 付託および判決を受け入れたのか 

9 おわりに 


第11章 失地回復という問題
    ――ハニシュ諸島紛争とバカシ半島紛争を題材として

      ……許 淑娟 

1 はじめに 

2 ハニシュ諸島紛争(エリトリア=イエメン仲裁) 

3 バカシ半島紛争(カメルーン/ナイジェリア事件) 

4 むすびに 


第12章 チャゴス諸島領有権紛争における国際裁判所の役割
      ……西元宏治 

1 はじめに 

2 植民地時代 

3 脱植民地化の進展とスエズ以東における覇権の交代 

4 BIOT 統治の正当性への挑戦

5 国際裁判所の活用 

6 その後の展開 

7 結びにかえて 


第13章 海から始まる戦争の防止
    ――ニカラグア=コロンビア領土海洋紛争を手掛かりに

    ……石井由梨佳 

1 はじめに 

2 ニカラグア=コロンビア領土海洋紛争 

3 国際裁判による紛争の制御

4 おわりに 


第14章 ビーグル海峡事件
    ――紛争の只中で国際法を語り継ぐ
……小寺智史 

1 はじめに 

2 ビーグル海峡をめぐるチリとアルゼンチンの紛争 

3 仲裁判決 

4 仲裁判決後の展開 

5 従来の評価 

6 国際法による紛争の制御――範例としての教訓 

7 おわりに

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第4部 強制力の使用
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第15章 コルフ島事件(1923年)における国際法の多層性
   ――囲い込まれた復仇
……福島涼史

1 はじめに

2 大使会議――早期撤退実現

3 法律家特別委員会――復仇の許容可能性

4 連盟理事会――規約による枠づけ

5 総会――世論の圧力

6 おわりに――1920年代の理論と現実


第16章 ロシアのウクライナ侵攻を契機とする
    もう一つの戦争の抑制
   ――第三次世界大戦を現実のものとしないために

      ……岩月直樹

1 はじめに

2 ロシアによるウクライナ侵攻に対する国連の対応

3 戦争に至らない強制的な対応措置としての第三国による
  対ロシア経済制裁

4 おわりに

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第5部 現下の紛争の制御について
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第17章 ロシア・ウクライナ戦争の制御における国際法の役割
   ――一方的強制措置(経済制裁)の文脈で

     ……山田卓平

1 はじめに

2 ロシアへの一方的強制措置――日本による措置の概要

3 対ロシア措置はロシア・ウクライナ戦争の制御に効果があるか

4  一方的強制措置による紛争制御への国際法学の寄与

5 おわりに


第18章  安保理常任理国を当事者とする
    侵略戦争において国連にできることはあるか

       ……豊田哲也

1 はじめに

2 領域紛争の一方的解決手段としての侵略戦争

3 領域紛争の司法的解決と政治的解決

4 おわりに――「侵略戦争」の後に


第19章 武力紛争統御における国際人道法の役割……新井 京


1 はじめに

2 目標区別原則と文民・民用物の「動員」

3 「戦争の霧」の中で―予防原則 

4 攻撃側と防御側の責任分担 

5 「人間の盾」 

6 おわりに 



第20章 パレスティナ武力紛争における人道的介入論の役割
   ――古典的目的-手段枠組みの応用可能性

      ……福島涼史


1 連載から読み解く実践知 

2 制御に求められる法理 

3 人道的介入の適性 

4 手段との均衡性 

5 人道的介入論の補完性 


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