書籍詳細:少年司法の再構築
立命館大学法学部叢書 6号 少年司法の再構築
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内容紹介
目次
序章 アメリカ少年司法改革の教訓と少年司法の再構築
第1節 少年司法の二重の課題
1 本書の課題
(1)教育機能の再生と適正手続の強化
(2)子どもの人権と少年司法の再構築
(3)二重の課題とアメリカ少年司法改革の教訓
2 本書の構成
(1)第1部「アメリカ少年司法改革の意義と教訓」
(2)第2部「日本の少年司法改革の課題」
第2節 アメリカ少年司法改革の教訓
1 アメリカ少年司法改革の基本動向
(1)パレンス・パトリエと少年保護
(2)少年司法改革の展開と転換
(3)ニュー・ヨーク少年司法改革
2 アメリカ少年司法改革の意義と教訓
(1)ニュー・ヨーク少年司法改革と多元的コンフリクト
(2)少年司法のサイクル
(3)適正手続と保護理念
(4)強制的介入の個人集中
(5)新しい少年司法理念の創造
第3節 日本の少年司法実務と新しい教育理念
1 少年司法の司法機能と教育機能
(1)司法機能と教育機能
(2)司法機能と教育機能の関係
(3)社会防衛機能の強調と教育機能の後退
2 対抗的理論の系譜
(1)ケース・ワーク思想
(2)司法福祉論
(3)弁護士の付添人実践と成長発達権
3 少年の成長発達権と新しい教育理念
(1)少年司法における成長発達権の保障
(2)新しい教育理念と少年司法の再構築
第1部 アメリカ少年司法改革の意義と教訓
第1章 アメリカ少年司法改革の基本動向
第1節 本章の課題
1 アメリカ少年司法改革の展開と転換
(1)少年司法改革の展開から厳罰政策への傾斜へ
(2)少年の刑事責任追及
2 アメリカ少年司法研究と本章の構成
(1)先行研究と本書の課題
(2)連邦少年司法政策への注目
第2節 少年司法改革の展開
1 初期の少年司法とパレンス・パトリエ保護理念
(1)少年司法の創設
(2)パレンス・パトリエと保護理念
(3)初期の少年司法の機能的特徴
2 1967『自由社会における犯罪の挑戦』
(1)大統領委員会報告書の位置
(2)少年非行の原因と非行防止策
(3)パレンス・パトリエ保護批判
(4)強制的介入の抑制
(5)適正手続の強化
3 合衆国最高裁判所判決
(1)適正手続保障の胎動
(2)一連の合衆国最高裁判所判決
(3)適正手続と少年司法
第3節 1974年少年司法非行防止法
1 連邦少年司法政策と少年司法非行防止法
(1)連邦少年司法政策の発展
(2)少年司法非行防止法の制定と連邦補助金
(3)連邦政府のリーダーシップと連邦補助金
2 少年司法非行防止法の概要
(1)連邦プログラムの重点課題
(2)脱施設収容
(3)1977年改正法
第4節 1980年代の連邦少年司法政策
1 少年司法非行防止法をめぐる動向
(1)1980年改正法
(2)成人用未決収容施設への少年の収容禁止
(3)レーガン政権の廃止要求
(4)連邦少年司法政策の転換
3 1987年模範少年司法法典
(1)模範法典の位置
(2)模範法典の基調
(3)模範法典の特色
4 保護理念の衰退と厳罰理念
(1)少年司法改革の展開
(2)厳罰理念の台頭
第2章 ニュー・ヨーク少年司法改革の基本動向
第1節 本章の課題
1 州レベルの改革への注目
2 ニュー・ヨーク少年司法改革への注目
第2節 初期のニュー・ヨーク少年司法と1962年家庭裁判所法
1 初期の少年司法の確立
(1)1922年子ども裁判所法
(2)パレンス・パトリエ保護理念と適正手続の後退
2 家庭裁判所法の制定
(1)裁判所機構改革と少年非行・家庭問題の取扱い
(2)独立した家庭裁判所の構想
3 家庭裁判所法の手続・処分と特色
(1)手続
(2)処分
(3)特色
第3節 少年処遇の構造改革
1 改革の始動
(1)少年処遇改革の社会的要因
(2)州政策としての脱施設収容
2 1970年代前期における少年処遇の構造改革
(1)少年院運営体制の変化とルガーの改革構想
(2)脱施設収容の進展と財政的要因
3 1970年代中期における少年処遇改革の展開
(1)エーデルマンの改革構想
(2)少年院処遇からのPINS排除
(3)1976年州法
(4)コミュニティに根ざした処遇の拡大
第4節 二つの少年司法改革立法
1 1976年少年司法改革法
(1)特色
(2)手続と処分
(3)1978年改正
2 1978年少年犯罪者法
(1)特色
(2)少年犯罪者事件の刑事手続
(3)家庭裁判所への事件移送
(4)刑罰と処分
第3章 ニュー・ヨーク少年司法改革の効果
第1節 本章の課題
第2節 少年犯罪者法の適用状況と犯罪抑止効果
1 適用状況と裁量的個別判断の残存
(1)適用状況
(2)裁量的個別判断の残存
2 一般抑止効果
(1)一般抑止効果と特別抑止効果
(2)少年犯罪者法の一般抑止効果
3 特別抑止効果
(1)過去の再犯比較研究
(2)処分適用状況
(3)再犯比較
第3節 少年処遇の構造的圧迫
1 閉鎖施設収容処遇の構造的拡大
(1)閉鎖処遇施設の収容増加
(2)州青少年部の対応
2 過剰収容問題
(1)未決収容施設における過剰収容問題
(2)過剰収容問題への対応
3 処遇の質的低下とコミュニティに根ざした処遇の縮小
(1)過剰収容と処遇の質的低下
(2)コミュニティに根ざした処遇の縮小
第4節 少年司法改革の沈静
1 少年犯罪者法批判とその廃止提案
(1)NGOの批判と廃止要求
(2)研究者および実務家からの批判
2 州議会の反応と1979年少年犯罪者法改正
(1)1979年改正
(2)州議会の反応
第4章 ニュー・ヨーク少年司法改革と多元的コンフリクト
第1節 本章の課題
1 少年司法改革の多元的コンフリクト・モデル
2 分析資料
第2節 少年司法批判と厳罰要求
1 少年犯罪状況と少年司法批判
(1)少年犯罪状況
(2)マス・メディアの注目と少年司法批判
2 マス・メディアの機能
(1)マックギャレルの記事内容分析
(2)マス・メディアの影響力とアジェンダ設定機能
第3節 少年司法改革法制定をめぐる政治プロセス
1 政治プロセスの本格的展開
(1)政治プロセスの始動
(2)二つの改革構想
(3)州知事の拒否権行使と州知事委員会の設置
2 州知事専門委員会と少年司法改革法
(1)州知事専門委員会の立法提案
(2)州議会保守派の抵抗と譲歩
第4節 少年犯罪者法制定をめぐる政治プロセス
1 政治プロセスの継続
(1)少年司法改革法批判と管轄権放棄制度の提案
(2)対老人犯罪特別法をめぐる政治プロセスの展開
2 死刑立法をめぐる政治プロセスの展開
(1)死刑法案可決と州知事の拒否権行使
(2)再度の法案可決と再度の拒否権行使
3 少年犯罪者法制定に至る政治プロセス
(1)1978年少年司法改革法改正
(2)選挙争点としての刑事司法改革
(3)ある少年犯罪事件と州知事の立場転換
(4)政治的妥協と少年犯罪者法成立
第5節 多元的コンフリクトと少年司法改革
1 ニュー・ヨーク少年司法改革の政治プロセス
(1)正統性回復のための象徴的メッセージ
(2)公衆の厳罰要求と政治問題化
(3)少年司法改革の現実的効果
2 アメリカ少年司法改革の構造的基盤要因
(1)社会構造的要因と文化的要因
(2)政治問題化と政治プロセスの方向づけ
3 少年司法の新自由主義的改革
(1)現代産業主義社会と少年司法
(2)少年司法の新自由主義的改革
第5章 アメリカ少年司法改革における少年の成長発達と人権
第1節 本章の課題
1 厳罰政策のなかでの適正手続
2 少年の刑事責任と少年裁判所廃止論
第2節 厳罰政策と適正手続
1 適正手続の形骸化
(1)少年司法の現実と適正手続
(2)弁護権保障の現実
(3)厳罰政策のなかでの適正手続の形骸化
2 被疑少年取調べをめぐる権利放棄ルールの展開
(1)被疑少年取調べとミランダ・ルール
(2)権利放棄の有効性判断に関する総合判断ルール
(3)少年の権利放棄についての絶対ルール
3 権利放棄ルールをめぐる立法と判例
(1)合衆国最高裁判所判決
(2)ペンシルヴェニア州最高裁判所判決の変遷
(3)テキサス州法における弁護人関与ルールの消長
4 ミランダ保障の実質化と厳罰政策
(1)少年の権利放棄をめぐる実証研究
(2)厳罰政策のなかでの実質化の後退
第3節 厳罰政策の法理論と少年の成長発達
1 厳罰政策の法理論
(1)少年の社会復帰処遇適応性
(2)厳罰政策と刑法原則
2 少年の成長発達と刑罰
(1)少年の発達に対する刑罰の効果
(2)刑罰の発達阻害効果
(3)刑罰による社会的再統合の阻害
第2部 日本の少年司法改革の課題
第6章 少年の適正手続と手続参加
第1節 本章の課題
第2節 少年の適正手続としての審判非公開
1 刑事裁判の公開の憲法構造
(1)刑事裁判の公開と少年審判の非公開
(2)刑事裁判の公開と適正手続
(3)刑事裁判の公開と知る権利
2 少年審判の非公開をめぐる理_状況
(1)非公開の論理
(2)原則公開の論理
3 少年の適正手続と少年審判の非公開の意義
(1)少年審判と憲法上の「裁判」
(2)少年の適正手続としての非公開
(3)少年の適正手続と知る権利・報道の自由
(4)適正手続と市民参加
第3節 少年の手続参加と公開刑事裁判
1 少年の適正手続と公開刑事裁判
2 ブルジャー事件裁判の経過
(1)事件発生から裁判へ
(2)有罪判決と量刑
(3)司法的再審査と人権裁判所への申立
3 ヨーロッパ人権裁判所判決
(1)人権条約違反の判断
(2)公正な裁判を受ける権利に関する判断
4 イギリス国内での対応とその後の経過
(1)イギリス少年司法へのブルジャー事件の影響
(2)人権裁判所判決への反応とその後の経緯
(3)少年の刑事裁判に関する実務指令
5 公正な裁判と手続参加権――人権裁判所判決の意義
(1)公正な裁判を受ける権利としての実効的手続参加
(2)日本法における手続参加権
(3)手続参加権と少年の公開刑事裁判
第7章 少年法厳罰化改正の批判的検討
第1節 本章の課題
1 新自由主義と刑事法改革
2 厳罰化改正の論点
第2節 厳罰化改正提案の位置と論理
1 厳罰化改正の提起とその論理
(1)政府・与党による提起
(2)刑事処分適用年齢引き下げの論理
2 厳罰化改正提案の位置
(1)1970年代改正案との関係
(2)「非行事実認定手続の適正化」改正法案との関係
3 厳罰化改正提案の前提への疑問
(1)少年非行の「凶悪化・低年齢化」について
(2)刑法の刑事未成年規定との関係
4 厳罰化改正提案の批判的検討
(1)少年非行のリアリティ
(2)矛盾の拡大
(3)少年法の存在意義
第3節 刑事立法の合理性と少年法厳罰化
1 法的判断と経験科学
(1)法的判断の構造
(2)法的判断における事実認識
2 少年法の厳罰化改正案をめぐって
(1)少年非行の「凶悪化」
(2)刑罰の正当化要件としての犯罪抑止効果
(3)一般抑止効果
(4)特別抑止効果
(5)立法過程の問題
3 刑事立法の合理性
(1)「国民の期待」と刑事立法
(2)刑事立法過程の適正手続
(3)刑事立法における政治的責任
第4節 少年法における規範意識と責任
1 規範意識強化と「責任」の自覚
(1)2000年厳罰化改正の根拠
(2)規範意識強化と少年法改正
2 規範意識と厳罰化
(1)犯罪抑止効果における規範意識強化
(2)厳罰化による規範意識強化
3 「責任」の自覚と少年法
(1)「責任」の自覚の意味
(2)責任の自覚と少年司法の教育機能
4 少年法における「責任」と保護処分
(1)「責任」に基づく制裁としての保護処分
(2)刑法における少年の「責任」
(3)少年の「責任」と少年法
(4)保護処分と責任能力
第5節 犯罪報道の公共性と少年事件報道
1 少年法61条とそれへの批判
(1)少年法61条による公表禁止
(2)懲罰的制裁としての公表要求
(3)知る権利・報道の自由からの公表要求
2 知る権利・報道の自由と少年事件報道
(1)少年法61条違憲論
(2)少年法61条違反報道をめぐる裁判例
3 本人特定事実の公共性と少年法61条
(1)犯罪報道の公共性
(2)本人特定事実の公共性
(3)少年法61条の意義
終章 少年司法改革の展望
第1節 少年法における検察官送致決定の意義
1 2000年少年法改正と検察官送致決定
(1)2000年改正
(2)少年法20条2項の運用状況
(3)少年法20条2項の構造
2 刑事処分相当性をめぐる理論状況
(1)保護不能と保護不適
(2)教育機能と刑事処分相当性
3 新しい教育理念と刑事処分相当性
(1)刑事処分相当性の意義
(2)「罪質及び情状」の意味
(3)検察官送致決定の手続と判断
4 説明責任規定としての少年法20条2項
(1)これまでの理論状況
(2)処遇決定に関する家庭裁判所の説明責任
(3)説明責任下での決定理由と社会調査
(4)少年と刑事処分
第2節 少年司法改革の現実的契機
1 少年司法再構築の契機
2 少年弁護の意義と機能
(1)少年弁護の現状と課題
(2)法的援助の保障の権利構造
(3)少年弁護の機能
3 少年司法への市民参加
(1)少年司法の教育機能とコミュニティ
(2)市民参加の理念と制度
(3)市民的公共性の構築